[55982] faith さん
一般の自動車ユーザーが納得できる形での使用方法を提示できなかったことが、これまで道路特定財源の公共交通整備への活用が実現しなかったことの大きな要因だと思うのですが、どんなものでしょうか。
正にその通りだと思います。この問題は実に奥が深いものだと認識しています。皆さんのご意見を聞かせていただいたおかげで、私の考えも多少整理されてきたかなと思っている次第です。
まず私の基本的な認識は以下の通りです。
(1)そもそも目的税のひとつである揮発油税などからなる道路特定財源はあくまでもその目的に使用するものであり、これは公平性など税の基本理念に照らせば余剰が生じたから他に転用して良いというものではない。余剰が生じるならば減額(減税)するべきものである。
(2)しかし税のもう一方の役割である国策を遂行するための手段、良い悪いは別として関税のように、ある方向に社会全体を誘導する手段として使うことは許される。もちろんその為の事前説明がしっかりなされコンセンサスを得るという手続きが必要であるということは言うまでもない。
(3)道路特定財源についても、余ったから一般財源に回すということではなく、今後のわが国の交通体系というものをどのようなものにするのかの国民的合意を得て、その方向に向かうような支出にまわすべきである。
このうちの「今後のわが国の交通体系というものをどのようなものにするのかの国民的合意」というものがわが国にはなく、その議論すら行われていないのは何故なのだろうかというのが私の素朴な疑問です。
交通体系というのは、例えば公共交通と私交通へのそれぞれの依存度をどの程度とするかということであり、もっと具体的に言えば地方では当たり前になった一家に複数台の車を持たせることを前提とするのか、一家に一台を前提にするのかなどが基本でしょう。この辺りが今は曖昧であり、特に高齢化に伴う運転不適正者が今後増えて来ることからもやはりそのような議論が必要になるはずです。
例えば高齢者に対しては路線バスなど公共交通網の拡充で対処するのか、タクシー利用に補助金を出すのか、自動運転ができるような車の開発やインフラへの投資をするのか、それとも青森市などがはじめたような高齢者そのものを都心に移住させるかなど選択肢がいくつかあるはずで、いずれにせよ金がかかることであり取捨選択ないしは優先順位づけを急がなければならないはずです。
しかしこれには、自動車の台数を減らすのかどうかという議論を避けて通るわけには行かないでしょう。それでなくとも昨年は自動車の新車販売数が20年ぶりの低水準になったそうです(1/6付日経新聞)。これ以上の販売減をもたらすような政策に自動車業界が簡単に同意するでしょうか。一自動車業界と言えども、それが今やわが国を代表する基幹産業であり、間接部門を含めるとこの業界の盛衰はわが国経済全体にとって非常に大きな影響を与えます。政治的にも労使含めて強大な勢力です。
また一方道路族とは誰かと言うと、実は国民の大多数が道路族なのではないのでしょうか。自動車産業はもちろん建設業やその背後にいる鉄鋼、電気などの関連メーカーだけでなく、工事が行われることによって旅館や飲食店などがなんとか持っている地元、そして何よりも利用者、私も良く車を利用しますが渋滞などに合うと道路行政の不手際だとつい非難をしたくなってしまいますからそんなときは私も道路族です。
だからこのような国策にかかわるような議論を始めると、それこそわが国の産業構造を根本から覆すような議論になり収集がつかなくなる、いままで隠れていた諸々の矛盾などが白日の下に晒されるパンドラの箱を開けるようなことになり、だから誰もここに近づこうとしないのではないのかと思うのです。
最早国全体では解決困難なことかも知れません。地方単位でならば可能なのかも知れず、ひょっとして道州制というのはこんなことまでも考えられているのではないかと期待したりしています。
以上が私見ですが、公共交通への取り組み方がわが国よりはずっと進んでいるドイツも同じ自動車産業国であるなど、まだまだ私自身認識不足の面があると思っています。
長くなり恐縮していますが、引き続きご意見を聞かせていただければと思っています。