[79369] デスクトップ鉄 さん
駅名も由来の一つである自治体名
これを見て最初に思ったのは「拡大解釈」なんじゃないかなあということだったのですが,それは後に回して…。
各務原市があるなら,これも入れてよ,と言ってみましょう。
市名 | 市名誕生日 | 旧市町村名 | 駅名 | 駅名誕生日 | 開業日 | 開業時駅名 |
相模原町 | 1941/04/29 | 高座郡上溝町,座間町ほか | 相模原 | 1938/03/01 | - | 相模原→小田急相模原 |
「現・相模原市」ということで…。
一番右の欄にあるように,この「相模原駅」は現在の「小田急相模原駅」。1941年4月29日の「相模原町」発足直前の4月5日に省線(国鉄)横浜線上に開設された「“軍都”の中心駅」に召し上げられ,民間の小田急は駅名の改称を余儀なくされた,というのはここで何度か触れたお話です。何しろ,「お上」には逆らえない時代ですから。
これも何度か触れられた話ですが,この「(小田急)相模原駅」は同じ頃に近くに開設された 臨時東京第三陸軍病院(戦後,国立相模原病院を経て,現・独立行政法人国立病院機構相模原病院) の最寄駅として開業しました。この頃,多くの陸海軍施設が相模原周辺に移転・開設されているのですが,それらは「原町田」とか「高座」「相模」という地名を冠していました。その中で「相模原」を最初にメジャーな呼称として用いた最初の例が,小田急のこの駅だったようです。
だから,その論法で言えば,「相模原市(←相模原町)」も小田急の駅名に由来する自治体名,と言えなくもない。でも,たぶんそれは違う。
「軍都」を中心とした高座郡北部9町村での合併交渉の過程(途中で大和村=現大和市北部が脱落)で新市名として「相模市」「相武台市」などの候補の中から「相模原市」が選ばれました(ロクな市街地もないくせに「市」を名乗るとは…,と内務省に呆れられて「相模原町」となったのはご愛嬌)が,その過程で小田急の駅名の存在は話題にはなっていないようです。すでに軍都の呼称として「相模原」は広く定着していたようで,何も小田急の駅名が始まりという意識はどこにもないのでしょう。少なくとも「相模原」が小田急の造語でないことは確かで,そうすると「小田急の駅名由来」と考えるのは難しい。
「各務原市」の場合,高山線の「各務ヶ原駅」開業(1920年)よりも前の1917年に陸軍が「各務原飛行場」(現・航空自衛隊岐阜飛行場)を開設しています。
「各務原」(←高山線の駅は「かがみがはら」なんですね。よくある“揺れ”というやつで,地名自体としてどちらが「正しい」か詮索するのはナンセンス。国鉄はたまたま“濁っている”方を使い,自治体名としては“濁っていない”方を採用している,それだけのことです。あるいは「ヶ」の有無も同様)という地名がいつ頃から行われていたのかわからないのですが,少なくともそれをメジャーな形で用いたのは鉄道省(高山線)よりも陸軍の方が先。で,「習志野」がそうであるように,地名を広めるうえで陸軍の宣伝力は圧倒的です。あえて言えば,「各務原」は“陸軍由来”とした方がいいかもしれない。
むしろ,JR・名鉄の両「各務(ヶ)原駅」前の町名「鵜沼各務原町」こそ駅名由来かもしれません(←「大字鵜沼」から分立?)。
町名・字名という狭い区画の呼称であれば,そこに駅があってその駅名が町名字名の由来である蓋然性が高そうだ,という共通理解は成り立ちやすいのですが,自治体名レベルの広域の呼称になると,駅というピンポイントな施設がじかにその名前の由来となった,というのは,たとえば神奈川県の 山北町 のなどの「鉄道の町」のような例を除けば,「そうは言えるかもしれないけれど,確証はできないよね」となるのではないかと思います。
「会津若松市」や「富士吉田市」,「近江八幡市」,「大和高田市」などの場合は,ほかの市との同名回避の手段として,おそらくはその名前の鉄道駅名がなくても自然に出てくるものでしょう。
だから,リストの中の多くの市名は拡大解釈なんじゃないかなあ,と思った次第です。