[78248] 星野彼方 さん
「弓ヶ浜半島」は半島なのか?
みんなが「半島」と呼んでいるなら,「半島」なんじゃないですかね。
地形としては,弓ヶ浜は“半島”全体で「砂州」の,しかも“典型例”の一つです。
そもそも「半島」という言葉(←あえて「用語」という言葉は使わない)が意味するものは極めて曖昧です。
手許に『オックスフォード地理学辞典』田辺 裕 監訳,2003年,朝倉書店 がありますが,これの「半島」の項には,
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海に向かって突き出ており,まわりをほとんど海に囲まれている,大地の一部.
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と書いてあるだけです。これは英語の辞典を翻訳したものですから,これも原文の peninsula の項を翻訳したものなのでしょう。日本語の「半島」という言葉自体,少なくとも今私たちが使っているような意味では英語の peninsula の訳語として使われているだけで,上の定義文以上の意味はないのだろうと思います。
だからたとえば,東京大学出版会の
『日本の地形』シリーズ(2001年~2006年)でも「半島」という言葉については特に定義せず,“すでにある呼称”として用いられています。
ちなみに弓ヶ浜の“半島”について,第6巻『近畿・中国・四国』(2004年)で「弓ヶ浜半島」という呼称を用いながら,砂州地形について述べる部分では「弓ヶ浜砂州」と呼んでいます(p.194~198)。
以前にも話題になったことだと思いますが,“法人名”として定められている自治体の呼称や法令・例規に根拠を持つ行政上の地名とは違って,この種類の呼称には学術上の議論の場においても“唯一絶対”のものとして公式に定められたものはないのではないかと思います。
学校教育の場では,たとえば「越後平野 → 新潟平野」のように“一斉に”用語が変わったものがあって,そこに(かつての)文部省の“指導”が匂ってくることもないわけではないのですが,私自身はまだこの指導文書を確認したことがありません。仮にあるとしても,それは“教科書検定”のある中等教育段階までであって,専門家の世界,あるいは民間の経済活動に影響を及ぼすものではないでしょう。
むしろ一般社会に影響力を持つのはマスコミが採用している(かもしれない)“申し合わせ事項”のようなものかもしれませんが,そこで個々の地形について取り決めがあるかどうか。
結局はお説のとおり,“言っちゃった者勝ち”だと思いますよ。
あとは周りのみんなが追随してくるかどうか。みんなが受け入れてくれれば定着するし,無視されれば廃れていくだけ…,なのでしょう。