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YTさんの記事が10件見つかりました

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[90107] 2016年 3月 25日(金)00:18:20【1】YT さん
西八代郡上九一色村の扱いについて 【追記あり】
[90077][90092]オーナー グリグリさん

作成されました表を見て、一点気になった点があります。それは2006年3月1日付で甲府市と南都留郡富士河口湖町に分割された、西八代郡上九一色村の扱いについてです。

自分もかつて[82005]の中で、

上九一色村については「市区町村の変更情報」として別項目で扱われ、「分村:梯・古関」が甲府市に編入、「分村:富士ケ峰・本栖・精進」が南都留郡富士河口湖町に編入と記載されておりました。

と書いてしまいましたが、2000年以前の国勢調査報告書に記載されている「付表6 市区町村の廃置分合・境界変更・名称変更一覧」では、これらの情報は一括して同一の表で扱われており、上九一色村の一件も、人口異動を伴う境界変更データとして扱った方が良いと思います。

一応国勢調査報告書の方では、

参考6 廃置分合・境界変更・名称変更一覧(pdfファイル)

で閲覧可能です。内容は以下の3つを含み:

(1) 都道府県間の境界変更一覧(大正9年10月2日~平成22年10月1日)
(2) 市区町村の境界変更一覧(平成17年10月2日~平成22年10月1日)
(3) 市区町村の変更情報一覧(平成17年10月2日~平成22年10月1日)

上九一色村の分割については(3)の「市区町村の変更情報一覧(平成17年10月2日~平成22年10月1日)」の項にまとめられています。

都道府県名実施年月日旧市町村名合併等の内容合併,市・町制施行後の状況市区町村コード
山梨県2006.3.1東八代郡中道町,西八代郡上九一色村(分村:梯・古関)甲府市へ編入甲府市(コウフシ)19201
2006.3.1西八代郡上九一色村(分村:富士ケ峰・本栖・精進)南都留郡富士河口湖町へ編入富士河口湖町(フジカワグチコマチ)19430

2005年の国勢調査報告書以降、市区町村の変更情報一覧が独立し、これに関わる異動した人口の詳細が省かれるようになってしまったので、具体的な数字も国勢調査報告書と照らし合わせて計算する必要が出て来てしまいますが。

【追記】すみません。上九一色村については、国勢調査人口比較における人口異動を伴う組替え要因と人口組替の方では言及がありましたね。

ただ上九一色村のような分割のケースに関しても、今回作成した人口異動を伴う境界変更一覧に追加した方が良いと思います。合併の場合は、過去のそれぞれの境界内の人口を単純に足せば、現在の境界内の人口との比較による人口増加率等の算出が可能ですが、分割の場合は過去の人口との比較の際に、小地域データが無ければ按分推計という作業が必要となり、その点で小規模な地域の移動による境界変更と同じとなります。
[90087] 2016年 3月 18日(金)03:28:43YT さん
柏崎市~柏崎町の間の境域変更
[90077] オーナー グリグリさん

久々に投稿します。

3.[81966] 柏崎市と柿崎町の境界変更の異動年月日(どちらが正しい?)
[81966]では、「1989.4.1」となっています。ところが、平成3年面積調 p.81(pdf)によると、異動年月日が「平成3年(1991年)10月1日」となっています。告示は「1989.3.29自治省告示第58号」であり、この日付からは「1989.4.1」が妥当に見えます。また、平成2年(1990年)国勢調査にある昭和60年(1985年)組替人口と昭和60年(1985年)国勢調査確定人口に差があり、この境界変更による人口異動数と一致していますので、やはり「1989.4.1」が妥当に見えるのですが、面積調の異動年月日を単なる間違いだとするのも変です(平成3年の面積調に書かれていることから)。ちなみに、平成元年、平成2年の面積調にはこの境界変更の記述はありません。これはいったいどういうことでしょう。どなたかご教示いただければ。


一応国勢調査報告書の「付表5 市区町村の廃置分合・境界変更・名称変更一覧 (昭和60年10月2日~平成2年10月1日)」では、以下のように記述されています。

年月日異動地域昭和60年人口
205 柏崎市86,198
1985.10.1旧柏崎市 (205)86,020
1989.4.1旧中頸城郡柿崎町の一部(541*)178

年月日異動地域昭和60年人口
541 中頸城郡柿崎町13,294
1985.10.1旧中頸城郡柿崎町 (541)13,472
1989.4.1旧柿崎町の一部が柏崎市へ (541* to 205)-178

また「付表6 市区町村の廃置分合・境界変更・名称変更一覧 (平成2年10月2日~平成7年10月1日)」で1990年以降の境域変更を確認しましたが、人口の異動を問う/問わないに関係なく、1990.10.2~1995.10.1の間での柏崎市・柏崎町の境域変更の記載はありません。


4.[81966] 新発田市と加治川村の境界変更の異動年月日(どちらが正しい?)
[81966]では、「1989.4.1」となっています。平成2年面積調 p.83(pdf)によると、異動年月日が「平成2年(1990年)9月21日」となっています。告示も「1990.8.23自治省告示第129号」となっており、異動年月日は9月21日が妥当な気がします。ちなみに、面積調の同じページに、異動年月日が1989.4.1の加治川村と紫雲寺町の境界変更の記述があり、こちらとの取り違えではないかと推察しますが、YTさん、いかがでしょうか。なお、国勢調査の組替人口には影響はありません。


すみません。「1990.4.1」が正しく、「新発田市」の方は人口や自治体コードから言っても「北蒲原郡紫雲寺町(15309)」との書き間違いです。25人の人口の異動は北蒲原郡紫雲寺町との間で起こったことです。
[88602] 2015年 8月 9日(日)21:21:13【2】YT さん
徴発物件一覧表記載の3府4県の明治22年、明治23年末の現住人口
2ヶ月ぶりに投稿します。

以前[87941]で徴発物件一覧表記載の明治22年(1889年)12月31日、明治23年(1890年)12月31日の現住人口を、日本帝国民籍戸口表記載の本籍・現住人口、官報記載の現住人口(明治22年末, 明治23年末)と共にまとめるすることにしたと書きましたが、東京府・京都府・大阪府・神奈川県・兵庫県・長崎県・新潟県とまとめている内に、行数が15,000を超えてしまいましたので、現時点での集計状況をまとめました。以下のサイトから、LHAで圧縮された「3fu4ken.lzh」をダウンロードできます。ファイルサイズは約1Mbで、中にエクセルファイル「3fu4ken.xls」(約3.6 Mb)が入っています。

http://u6.getuploader.com/SR1gou/download/882/3fu4ken.LZH

また『明治二十四年 徴発物件一覧表』(データは明治23年末)の内、東京府を含む10ページを
こちら】
にアップロードしました(約7Mb,pdf形式)。ファイル名に日本語全角フォントを入れたところ、リンクのURLが長くなってしまいました。


前の投稿でも書きましたように、『明治二十四年 徴発物件一覧表』の特徴は、

(1) 大字別人口の記載がある。ただし、京都府・大阪府・神奈川県・長崎県・新潟県の場合は「(大字)~」と記載されているのに対し、東京府の場合は「(元)~」、兵庫県の場合は(大字)や(元)の記載なしにそのまま元町村名が記載されているようです。

(2) 北海道・沖縄・伊豆諸島・小笠原・隠岐・対馬・奄美・沖縄県の町村制未施行の町村別人口の記載がある。ただし小笠原の父島・母島内の村別人口の記載はなく、残念ながらトカラ列島の十村の人口の記載が欠落しているようです。

(3) 町村制施行前の連合戸長役場、町村制施行後の町村組合役場の所在地が分かる。ただし現状では他の史料との比較ができないため、役場移転の情報を他でチェックすることはできません。

明治22年末・明治23年末の府県別町村数に関しては、『県治事務 市町村及町村組合』の方に集計があります。今回「3fu4ken.xls」でまとめた町村数と比較したところ、京都府・大阪府・長崎県は町村数が一致しました。また兵庫県に関しては、油良村→幸世村の改称を明治22年中とカウントすることにより、「村制のまま改称」の数字が一致しました。ところが東京府と新潟県に関しては、微妙に町村数が異なる箇所があります。以下に数字をまとめますが、どうも東京府に関しては伊豆・小笠原の町村制施行前の町村数のカウントに問題があること、新潟県に関しては、石地町村・北大瀁村をめぐる問題([68959]のMIさんの調査結果参照)のほか、町村組合の解消等にからめて数字に問題が発生しているようです。

府県庁郡市町村制施行の町村役場数(M22)町村制未施行の役場数(M22)町村組合数(M22)町村制施行の町村数(M22)町村制未施行の町村数(M22)町村制施行の町村役場数(M23)町村制未施行の役場数(M23)町村組合数(M23)町村制施行の町村数(M23)町村制未施行の町村数(M23)町村増減町村役場増減町制施行村制のまま改称
東京府荏原郡19191919
東京府東多摩郡6666
東京府南豊島郡8888
東京府北豊島郡19191919
東京府南足立郡9999
東京府南葛飾郡242424241
東京府伊豆七島24242424
東京府小笠原島18584
東京府不一致0-20-70-60-7-40
東京府合計85238525852385251
新潟県北蒲原郡767676762
新潟県中蒲原郡666666661
新潟県西蒲原郡79797979
新潟県南蒲原郡543575535811
新潟県東蒲原郡12121212
新潟県三島郡43434343
新潟県古志郡51515151
新潟県北魚沼郡3213432134
新潟県南魚沼郡38547394471
新潟県中魚沼郡3535373722
新潟県刈羽郡68371692711
新潟県東頸城郡33333333
新潟県中頸城郡76767676
新潟県西頸城郡3713837138
新潟県岩船郡39393939
新潟県雑太郡20202020
新潟県加茂郡2112421124
新潟県羽茂郡14141414
新潟県不一致000-3200-311
新潟県合計79414815796148183214

なお「3fu4ken.xls」の市郡の配列は、『明治二十三年十二月三十一日調 日本帝国民籍戸口表』の各地方郡市戸口表に従い、各郡内の町村・大字の配列は、『明治二十四年 徴発物件一覧表』に従っています。大字名等はほぼ『明治二十四年 徴発物件一覧表』に従い、漢字の方は問答無用で新字体に書き換えた箇所が多々あります。また「明治二十四年徴発物件一覧表サンプル.pdf」を見ていただければわかるように、印刷が悪い箇所が多いため、町村別人口から大字別人口を除して数字をチェックするなどの、「不一致」の項目を作っています。このほか人口のおかしな点をチェックするため、日本帝国民籍戸口表記載の現住人口(内務省調査現住人口)、官報記載の現住人口、徴発物件一覧表記載の現住人口(陸軍省調査現住人口)との差もチェックしています。

日本帝国民籍戸口表の現住人口の数字が合計と一致しないのは、[82296]で説明したようにデフォルトのことです。また、例えば『明治二十四年徴発物件一覧表』記載の現住人口に関し合計と各大字別人口が一致しなかった場合、あるいは『明治二十三年 徴発物件一覧表』記載の現住人口と明治22年12月31日調の官報記載の現住人口との比較の結果、項目がずれていることが明らかな場合などには、一部人口を修正しています。とは言っても、大字と町村の人口のどちらかが間違っているか微妙な場合などは、そのまま修正せずに掲載しています。

官報と徴発物件一覧表の人口を比較した結果、明らかに数字にズレがあった場合、最小限の修正はしていますが、官報であっても、摂津国菟原郡の明治22年の町村別人口は明らかに間違っていますが(人口と町村の対応等)、修正しておりません。

また筑波大学村井研究室の歴史地理統計データとの比較もしておりますが、幾つか歴史地理統計データの入力間違いも見つけております。

総ての町村において大字別人口が記載されているわけではありませんが、最終的に表は大体7万行を超え、xlsx形式でないと対応できないことになるかも知れません。現在大体入力作業の20%~25%が終わったことになります。

【アップロードしたpdfファイルへのリンクURLが長くなり見難くなっていたので、テキストリンク機能で修正】
[87941] 2015年 6月 21日(日)17:30:32【1】YT さん
明治23年、明治24年の徴発物件一覧表について
久々に投稿します。

以前[81075]で「明治期の徴発物件一覧表」について少し紹介しましたが、改めて一橋大学経済研究所附属日本経済統計情報センター編『明治徴発物件表集成』を調べたところ、「明治二十四年 徴発物件一覧表」に凄まじい量の人口データが含まれていることを発見しました。

明治30年以前に陸軍省がまとめた一連の統計書は、近代デジタルライブラリーで閲覧可能な明治8年~明治14年の『共武政表』を含め、以下の通りです。

書誌実際の統計調査日時人口情報その他(郡・戸長役場連合等を構成する町村の名称を伺い知るもの)
明治八年共武政表(巻1-4巻5-8)明治5年~8年旧国郡別人口、人口一千名以上輻輳地人口
明治十一年共武政表明治12年1月1日調旧国郡区別人口、人口一百以上輻輳地人口
明治十二年共武政表()明治13年1月1日調旧国郡区別人口、人口一百以上輻輳地人口
明治十三年共武政表()明治14年1月1日調旧国郡区別人口、人口一百以上輻輳地人口
明治十六年徴発物件一覧表明治16年1月1日調旧国郡区別人口町村別戸坪数
明治十七年徴発物件一覧表明治17年1月1日調旧国郡区別人口町村別戸坪数
明治十八年徴発物件一覧表明治18年1月1日調旧国郡区別人口町村別戸坪数
明治十九年徴発物件一覧表明治19年1月1日調旧国郡区別人口町村別戸坪数
明治二十年徴発物件一覧表明治19年12月31日調郡区別人口、戸長役場所在地別人口戸坪数
明治二十一年徴発物件一覧表明治20年12月31日調人口データなし戸長役場所在地別戸数・戸坪数
明治二十二年徴発物件一覧表明治21年12月31日調郡区別人口、戸長役場所在地別人口戸坪数
明治二十三年徴発物件一覧表明治22年12月31日調郡市区別人口、町村別人口(戸長役場・組合単位)戸坪数
明治二十四年徴発物件一覧表明治23年12月31日調市区町村大字別人口戸坪数
明治二十六年徴発物件一覧表明治25年12月31日調郡市区別人口、町村別人口(戸長役場・組合単位)戸坪数
明治三十年徴発物件一覧表明治29年12月31日調郡市区別人口、町村別人口(戸長役場・組合単位)戸坪数

明治31年以降は『徴発物件表』と名前を替え、『明治三十四年徴発物件表』(例えば『第一師管徴発物件表』)、『明治三十六年徴発物件表』、『明治三十八年徴発物件表』(例えば『第一師管徴発物件表』)、『明治四十年徴発物件表』が出版されており、この内明治36年版以外は近代デジタルライブラリーで閲覧できるようです。また明治34年~大正元年には簡易版の『陸軍徴発物件表要覧』が出版されており、例えば近代デジタルライブラリーで閲覧可能なのは、明治34年版明治38年版明治44年版)のようです。

国勢調査開始前の人口データの内、最も標準的なのは内務省が出版し続けたもので、明治5年~明治9年調の『日本全国戸籍表』、明治10年~明治11年調の『日本全国戸口表』(ただしここまでは旧国・府藩県庁別人口のデータしか掲載されていない)、明治12年調の『日本全国郡区分人口表』、明治13年~明治19年始調の『日本全国民籍戸口表』(全部近代デジタルライブラリーで閲覧可能)、明治19年末~明治30年調の『日本全国民籍戸口表』(残念ながら明治20年~明治23年調版が近代デジタルライブラリーで閲覧できないが、『国勢調査以前日本人口統計集成』に収録)、明治31年以降5年毎の『日本帝国人口静態統計』(明治31年版は『日本帝国人口統計』で、明治36年調版明治41年調版大正2年調版大正7年調版など総て近代デジタルライブラリーで閲覧可能)があります。明治12年1月1日調の『日本全国郡区分人口表』以降、郡区別人口が掲載され続け、明治31年以降は町村別人口(ただし明治31年、明治36年の沖縄・奄美・小笠原などは間切や連合戸長役場管轄毎の集計人口に限られたりする)が掲載されています。また明治19年末~明治30年調の『日本全国民籍戸口表』には、人口1万人以上の都市人口が掲載されています([68620][68621]参照)が、個々の町村別人口までは掲載されていません。

一方で官報には、明治22年末調以降、毎年現住人口が公表されています。こちらですと明治30年以前も町村別人口を揃えることができますが、残念ながら町村制が施行されていない北海道・沖縄・その他島嶼部(伊豆・小笠原・隠岐・対馬・トカラ列島・奄美群島)に関しては町村別人口のデータが掲載されていません(例外として、町村制の導入が翌年に遅れた香川県に関しては、明治22年調でも現住人口が掲載されてます)。また内務省公表の現住人口と官報掲載の現住人口は数値が完全には一致しませんが、これは官報掲載の人口が本籍人口に対して出入寄留者を加減して求めているのに対し、内務省公表の現住人口は、さらに逃亡失踪者、陸海軍の兵営艦船に在る者、監獄に在る者、外国行きの者を加除して計算しているからです。ただし明治30年以前の内務省公表の現住人口の場合、郡区別人口を合算しても、府県別人口と一致しないという問題があり、同一府県内の人口移動に伴う出入寄留者の人口を、合計からわざわざ除外するという作業を行っていたせいのようです(この辺の事情については[82296]で詳しく考察しました)。

官報と内務省公表の人口データですら一致しないので、『徴発物件一覧表』のデータはそれほど価値がないと思っていました。ところが改めて明治23年版の徴発物件一覧表(データは明治22年12月31日調のもの)を閲覧し直したところ、なんと北海道、沖縄、対馬、隠岐、伊豆、小笠原、奄美に関して、人口データが掲載されていることに気付きました。人口データは組合や戸長役場連合を作っているところは、役場毎に集計されており、町村別人口は完璧にはなりませんが、逆に連合戸長役場・組合町村役場の所在地が分かります。さらに明治24年版(データは明治23年12月31日調のもの)では、組合や戸長役場連合を作っているところに関しても総て町村別人口が掲載されており、さらに町村に関しては大字別人口まで載っていました。『明治二十四年徴発物件一覧表』のデータに関しては以前[63483]でokiさんが紹介されていますが、筑波大学村井研究室の歴史地理統計データのサイトで入力されたデータの一部をダウンロードすることが可能です。しかしながらこちらのサイトに掲載されているデータは北海道、沖縄県、奄美などのデータを欠いており、入力が完成しておりません。さらにオリジナルのデータは大字別にまとめられていますが、その辺も省略されています。

というわけで現在、町村制が導入された頃である明治22年末・明治23年末調市町村・大字別現住人口の全体像を概観するため、現在この二年間の『日本全国民籍戸口表』、『官報』、『徴発物件一覧表』の本籍人口・現住人口をまとめているところです。ただ残念ながら明治23年版、明治24年版の『徴発物件一覧表』はともにトカラ列島の人口データが欠落しており、また幾つかの北海道の町村別人口の情報が抜けており、完全な表にはどうしてもならないようです。また市や大きい町の下の町丁は「大字」とは呼ばないのか、町丁別人口のデータもありません。

元々徴発物件一覧表のデータを閲覧し直すきっかけは、昭和10年より前の面積データを探すためでしたが、こちらの方は地租の対象となる総段別や町村別戸坪数の情報ぐらいしか入手できませんでした。その時点で存在した町村名のチェックには町村別戸坪数の情報が使えるかも知れませんが。

【訂正・追記:標題の数字を半角に修正。なお大字別人口ですが、多くの府県では「大字~」などという項目が作られていますが、残念ながら東京府などは「元~村」という項目が作られ、必ずしもすべての府県で大字別人口が揃っているわけでもなさそうです。】
[87464] 2015年 4月 12日(日)16:35:22【2】YT さん
昭和5年国勢調査時の面積にみられる丸め誤差
市町村別面積の最初の基礎となる資料が、『昭和十年 全国市町村別面積調』であることは言うまでもありません。ただし注意しなければならないのは、『昭和十年 全国市町村別面積調』記載の面積は昭和10年3月31日における面積であり、その後の6ヶ月間の合併・境域変更等により、国勢調査実施の昭和10年10月1日の面積とは異なる可能性があることです。ただ、幸いなことに『昭和十年 国勢調査報告 第一巻 全国編』記載の郡市別面積の方は、面積がちゃんと組み替えられております。例えば岐阜市の面積は、『昭和十年 全国市町村別面積調』では37.8 km2、『昭和十年 国勢調査報告 第一巻 全国編』では44.51 km2と、半年間の境域変更を配慮して修正されております。

一方昭和5年の国勢調査時の郡市別面積の方は、『昭和五年 国勢調査報告 第一巻』の方に小数点以下第三位まで、km2単位で記載されております。大正9年~平成22年の郡部・市部の面積については、平成22年の国勢調査報告書の方にも記載がありますが、それによると。

調査の年西暦全国面積市部面積郡部面積
昭和10年1935年382,545.425,094.53377,450.89
昭和5年1930年382,264.912,950.65379,314.26
大正14年1925年381,810.062,181.50379,628.57
大正9年1920年381,808.041,375.36380,432.69

大正9年、大正14年の郡部別面積と市部面積を合計しても、全国面積と一致しません。これは一種の丸め誤差なのですが、これには複雑な事情がからみ、時間があれば別記事でまとめます。一方昭和5年の面積については丸め誤差が発生していないようにみえます。しかしながら昭和5年の都道府県別面積(エクセルファイル)で、都道府県別面積を合計すると382,264.93 km2になってしまいますが、全国の面積合計382,264.91 km2よりも0.02 km2多くなってしまっております。実際47都道府県で[87439]の計算をしてみると、予想される丸め誤差は0.01*√(47/6/π) ≒ 0.016 となり、予想通りの誤差が出ていることなります。このような誤差が生じてしまう原因は、小数点以下第三位と小数点以下第二位の間の四捨五入に伴う丸め誤差にあります。

以下三種類の資料(A) 『昭和五年 国勢調査報告 第一巻』記載の都道府県別(郡部・市部別)面積(小数点以下第三位, km2), (B) 『昭和25年国勢調査報告 第七巻 都道府県編』記載の都道府県別(郡部・市部別)面積(小数点以下第二位, km2; 但し秋田県の郡部面積は昭和30年以降の国勢調査報告書で修正し、沖縄県の面積も昭和50年以降の国勢調査報告書記載の遡及データで追加), (C) 『昭和25年国勢調査報告 第一巻 人口総数』「第9表 地方及び都道府県の10年毎面積及び人口密度―大正9年~昭和25年」記載の都道府県別面積(小数点以下第二位, km2; 但し沖縄県の面積は昭和50年以降の国勢調査報告書記載の遡及データで追加)を比較し、それぞれの数字の差を記載すると以下の通りです。

都道府県A合計A市部A郡部B合計B市部B郡部C合計A-B合計A-B市部A-B郡部A-C合計B-C合計
全国382,264.9072,950.645379,314.262382,264.912,950.65379,314.26382,264.91-0.003-0.0050.002-0.0030.00
単純合計382,264.9072,950.645379,314.262382,264.912,950.65379,314.26382,264.93-0.003-0.0050.002-0.023-0.02
北海道88,775.036242.92088,532.11688,775.04242.9288,532.1288,775.04-0.0040.000-0.004-0.0040.00
青森県9,630.92473.7249,557.2009,630.9273.729,557.209,630.920.0040.0040.0000.0040.00
岩手県15,235.30649.72515,185.58115,235.3149.7315,185.5815,235.31-0.004-0.0050.001-0.0040.00
宮城県7,273.75453.1187,220.6367,273.7553.127,220.637,273.750.004-0.0020.0060.0040.00
秋田県11,663.86113.07911,650.78211,663.8613.0811,650.7811,663.860.001-0.0010.0020.0010.00
山形県9,325.75754.2759,271.4829,325.7654.289,271.489,325.76-0.003-0.0050.002-0.0030.00
福島県13,781.61334.19413,747.41913,781.6134.1913,747.4213,781.610.0030.004-0.0010.0030.00
茨城県6,092.2566.1696,086.0876,092.266.176,086.096,092.26-0.004-0.001-0.003-0.0040.00
栃木県6,436.58525.8506,410.7356,436.5925.856,410.746,436.59-0.0050.000-0.005-0.0050.00
群馬県6,335.82351.5926,284.2316,335.8251.596,284.236,335.820.0030.0020.0010.0030.00
埼玉県3,801.43913.3263,788.1133,801.4413.333,788.113,801.44-0.001-0.0040.003-0.0010.00
千葉県5,078.81012.3235,066.4875,078.8112.325,066.495,078.810.0000.003-0.0030.0000.00
東京都2,144.78788.5302,056.2572,144.7988.532,056.262,144.79-0.0030.000-0.003-0.0030.00
神奈川県2,353.484181.5812,171.9032,353.48181.582,171.902,353.480.0040.0010.0030.0040.00
新潟県12,578.64344.05012,534.59312,578.6444.0512,534.5912,578.640.0030.0000.0030.0030.00
富山県4,257.41927.5324,229.8874,257.4227.534,229.894,257.42-0.0010.002-0.003-0.0010.00
石川県4,197.51318.6164,178.8974,197.5118.624,178.894,197.510.003-0.0040.0070.0030.00
福井県4,017.9694.6734,013.2964,017.974.674,013.304,017.97-0.0010.003-0.004-0.0010.00
山梨県4,465.8668.2674,457.5994,465.878.274,457.604,465.87-0.004-0.003-0.001-0.0040.00
長野県13,604.18170.57813,533.60313,604.1870.5813,533.6013,604.180.001-0.0020.0030.0010.00
岐阜県10,494.70114.59110,480.11010,494.7014.5910,480.1110,494.700.0010.0010.0000.0010.00
静岡県7,769.91289.9037,680.0097,769.9189.907,680.017,769.910.0020.003-0.0010.0020.00
愛知県5,081.142250.7104,830.4325,081.14250.714,830.435,081.140.0020.0000.0020.0020.00
三重県5,765.34189.6115,675.7305,765.3489.615,675.735,765.340.0010.0010.0000.0010.00
滋賀県4,050.92921.9484,028.9814,050.9321.954,028.984,050.93-0.001-0.0020.001-0.0010.00
京都府4,623.19663.3134,559.8834,623.2063.314,559.894,623.20-0.0040.003-0.007-0.0040.00
大阪府1,812.631204.9321,607.6991,812.63204.931,607.701,812.630.0010.002-0.0010.0010.00
兵庫県8,321.875115.1678,206.7088,321.88115.178,206.718,321.88-0.005-0.003-0.002-0.0050.00
奈良県3,688.60029.7983,658.8023,688.6029.803,658.803,688.600.000-0.0020.0020.0000.00
和歌山県4,723.42317.6754,705.7484,723.4217.684,705.744,723.420.003-0.0050.0080.0030.00
鳥取県3,489.48113.8803,475.6013,489.4813.883,475.603,489.480.0010.0000.0010.0010.00
島根県6,618.0425.4916,612.5516,618.045.496,612.556,618.040.0020.0010.0010.0020.00
岡山県7,046.47582.3466,964.1297,046.4782.346,964.137,046.480.0050.006-0.001-0.005-0.01
広島県8,436.517128.1548,308.3638,436.52128.158,308.378,436.52-0.0030.004-0.007-0.0030.00
山口県6,082.10896.6905,985.4186,082.1196.695,985.426,082.11-0.0020.000-0.002-0.0020.00
徳島県4,143.22119.3104,123.9114,143.2219.314,123.914,143.220.0010.0000.0010.0010.00
香川県1,858.73022.0401,836.6901,858.7322.041,836.691,858.730.0000.0000.0000.0000.00
愛媛県5,667.10869.8375,597.2715,667.1169.845,597.275,667.11-0.002-0.0030.001-0.0020.00
高知県7,103.62029.0277,074.5937,103.6229.037,074.597,103.620.000-0.0030.0030.0000.00
福岡県4,939.646229.6264,710.0204,939.65229.634,710.024,939.65-0.004-0.0040.000-0.0040.00
佐賀県2,443.8979.1312,434.7662,443.909.132,434.772,443.90-0.0030.001-0.004-0.0030.00
長崎県4,075.77791.9023,983.8754,075.7891.903,983.884,075.78-0.0030.002-0.005-0.0030.00
熊本県7,437.72337.4487,400.2757,437.7237.457,400.277,437.720.003-0.0020.0050.0030.00
大分県6,333.88058.0856,275.7956,333.8758.086,275.796,333.880.0100.0050.0050.000-0.01
宮崎県7,738.29564.5787,673.7177,738.3064.587,673.727,738.30-0.005-0.002-0.003-0.0050.00
鹿児島県9,081.32313.7739,067.5509,081.3213.779,067.559,081.320.0030.0030.0000.0030.00
沖縄県2,386.2887.5572,378.7312,386.297.562,378.732,386.29-0.002-0.0030.001-0.0020.00

昭和25年以降の国勢調査報告書記載の過去の都道府県別面積(資料(C))に関しては、単純に昭和5年の国勢調査時の面積(資料(A))を小数点以下第三位で四捨五入をしたため、合計と全国の間に丸め誤差が発生したことが判ります。ところが昭和25年以降の国勢調査報告書記載の過去の郡部・市部別面積(資料(B))に関しては、昭和5年の国勢調査時の郡部・市部別面積(資料(A))を単純には四捨五入せずに、郡部面積、市部面積の合計が一致するように、端数を操作しており、結果、岡山県と大分県では都道府県別面積が却って四捨五入した値とずれるが、全国合計では一致するように数値が操作されております。大分県と岡山県に関し、異なる昭和5年の都道府県別面積(小数点以下第二位, km2)を載せているのは昭和25年の国勢調査報告書だけではなく、その後も二種類の異なる面積が国勢調査報告書に記載され続けています。

そもそも昭和5年の国勢調査報告書記載の面積(資料(A))が、市部・郡部・合計ともに丸め誤差が全くない時点で数字上おかしいのですが、下三桁を下二桁に四捨五入する際、実際には四捨五入以外の恣意的な操作により、合計が一致するように調整していたことが判るかと思います。

【文章の一部を不自然なのでカットし修正】
[87463] 2015年 4月 12日(日)15:16:44【6】YT さん
戦前の国勢調査時の面積の記載について:大正9年、大正14年国勢調査時の面積の数字に関する重大な問題点
以前、戦前の国勢調査報告書における市区町村別面積について[84575]でまとめましたが、一部修正して改めて掲載します。

報告書都道庁府県別面積支庁・郡市別面積市区町村別面積記載の桁数原資料
大正9年国勢調査○【km2・方里】××小数点以下第三位『大正九年 国勢調査記述編』
○【方里】××小数点以下第三位『大正九年 国勢調査報告 全国の部 第一巻』
△【方里】△【方里】×小数点以下第一位~第三桁『大正九年 国勢調査報告 府県の部』
○【方里】○【方里】×小数点以下第三位国立公文書館所蔵『大正九年十月現在 日本全国道府県郡市別面積 参謀本部調査』
大正14年国勢調査○【km2】××小数点以下第三位『大正十四年 国勢調査報告 第一巻 記述編』
○【方里】○【方里】×小数点以下第三位『大正十四年国勢調査報告 第二巻 全国結果表』
○【方里】○【方里】×小数点以下第三位国立公文書館所蔵『大正十四年国勢調査(速報) 大正十四年現在ノ帝国面積 人口課』
昭和5年国勢調査○【km2】○【km2】×小数点以下第三位『昭和五年 国勢調査報告 第一巻』
昭和10年国勢調査○【km2】○【km2】×小数点以下第二位『昭和十年 国勢調査報告 第一巻 全国編』
昭和15年国勢調査×××なし
昭和19年人口調査×××なし
昭和20年人口調査×××なし
昭和21年人口調査×××なし
昭和22年臨時国勢調査×××なし
昭和25年国勢調査○【km2】○【km2】○【km2】小数点以下第二位『昭和25年国勢調査報告 第7巻 都道府県編』
昭和30年国勢調査報告○【km2】○【km2】○【km2】小数点以下第二位『昭和30年国勢調査報告 全国都道府県郡市区町村別面積改定表』 ほか

以上のほか、大正9年~昭和22年の各都道府県の郡部合計、市部合計の面積は、『昭和25年国勢調査報告 第7巻 都道府県編』や、それ以降の国勢調査報告書の府県の部などに、小数点以下第二位までkm2単位で記載されています。

[84575]で、
大正9年の国勢調査報告には、庁府県別の面積しかありません。
と書いてしまいましたが、その後、大正9年の国勢調査報告書の『府県の部』を手に取ってみましたところ、市郡別面積が方里単位でまとまっていたことに気付きました。しかしながら府県によっては、小数点以下第一位だったり、小数点以下第三位だったりと一定ではありませし、一部の府県では面積の記述が欠落しています。さらに『記述編』記載の都道府県別面積(方里)と、『府県の部』記載の面積(方里)が一致しない府県が多々存在するという問題が見受けられます。

その後、国立公文書館に『大正九年十月現在 日本全国道府県郡市別面積 参謀本部調査』という資料があることを知り、喜んで閲覧しました。これにより大正9年国勢調査時の全国の郡市別面積(ただし北海道は支庁別)データが小数点以下第三位で揃いました。しかしながら困ったことに、国立公文書館所蔵『参謀本部調査』、『府県の部』、『記述編』の三点の面積が全部異なる府県が存在することも明らかになりました。

更に『昭和25年国勢調査報告 第7巻 都道府県編』記載の都道府県別面積は、『記述編』記載の都道府県別面積とほぼ一致しますが、郡部合計・市部合計の面積は国立公文書館所蔵『参謀本部調査』、『府県の部』とも異なり、国勢調査とその関連文献だけで3種類の異なるデータ(内、郡市別面積の詳細が記載されているのが2種類、合計だけ記載されているのが1種類)が存在することが明らかとなりました。

このほか、戦前の人口問題研究会がまとめた『日本人口密度図』(1934年)という本に大正9年、14年、昭和5年の郡市別面積がまとまっていますが、こちらは昭和5年の面積を大正9年、大正14年に遡及させて計算しており、大正9年、大正14年に関しては全く別系統の面積の数字となっております。

さらに石橋五郎監修, 小野鐵二編纂『大正九年十月一日現在 大日本郡市別人口密度表 近畿地方町村別人口密度表』(1924年)という本があり、地方統計書や地図からの独自計算により、陸軍参謀本部公式の数字を訂正したりしているのですが、これも完全に別系統の面積の数字ということになります。

以上、大正9年の郡市別面積の資料別のデータ記載状況をまとめると:

資料郡部・市部合計値郡市別面積備考
『大正九年十月現在 日本全国道府県郡市別面積 参謀本部調査』小数点以下第三位(方里)小数点以下第三位(方里)系統1a (速報値?)
『大正九年 国勢調査報告 府県の部』不完全不完全系統1a' (上の速報値を極一部修正したもので、こちらの方が速報値の可能性あり)
『昭和25年国勢調査報告 第7巻 都道府県編』 小数点以下第二位(km2)なし系統1b' (各都道府県別の郡部・市部合計値の記載のみ;上の速報値を大幅に修正したもの)
『日本人口密度図』小数点以下第二位(km2)小数点以下第二位(km2)系統2 (昭和5年からの遡及データ)
『大正九年十月一日現在 大日本郡市別人口密度表 近畿地方町村別人口密度表』小数点以下第二位(km2)小数点以下第二位(km2)系統3 (独自集計)

大正14年の面積でも同様の問題があり、まず同じ国勢調査でも、『全国結果表』と『記述編』では数字が異なり、『全国結果表』記載の面積に1方里=(216/55)^2 方粁(km2)≒ 15.4234711 km2として変換しても、『記述編』の面積と一致しません。これについてこちらの『記述編』の説明によると
内地ノ面積ハ河川及湖沼ヲ含ム總面積ニシテ陸地測量部ノ調査ニ係ルモノナリ。而シテ此ノ面積ハ最新ノ改調又ハ修正測図ニ依リタルヲ以テ既ニ公表ノ第二巻全国結果表ニ掲ゲタルモノト必ズシモ符合セズ。
とあり、『全国結果表』の面積は速報値ということなります。

なお国立公文書館所蔵『大正十四年国勢調査(速報) 大正十四年現在ノ帝国面積 人口課』記載の郡市別面積は、完全に『全国結果表』記載の郡市別面積と一致しました。一方で『昭和25年国勢調査報告 第7巻 都道府県編』記載の都道府県別面積は、『記述編』記載の都道府県別面積とほぼ一致するものの、郡部合計・市部合計の面積(それぞれ2,181.50km2, 379,628.57 km2;沖縄県の面積は昭和50年以降の国勢調査報告書記載の数字で加算)は『記述編』(それぞれ 2,181.264 km2, 379,628.798 km2)と若干異なります。もっともその違いは0.23 km2~0.24 km2とごく僅かで、一府県の修正が入った程度ということになります。このことから大正14年の郡市別面積は、郡市別の詳細な数字の残っている1種類と、合計値だけ判明している修正された1種類の、合計2種類の系統があることになります。

これとは別に石橋五郎監修, 小野鐵二編纂『大正九年十月一日現在 大日本郡市別人口密度表 近畿地方町村別人口密度表』にも大正14年の郡市別面積の記載がありますが、数字が異なります。

以上、大正14年の郡市別面積の資料別のデータ記載状況をまとめると:

資料郡部・市部合計値郡市別面積備考
『大正十四年国勢調査報告 第二巻 全国結果表』小数点以下第三位(方里)小数点以下第三位(方里)系統1a (速報値)
『大正十四年国勢調査(速報) 大正十四年現在ノ帝国面積 人口課』小数点以下第三位(方里)小数点以下第三位(方里)系統1a (上に同じ)
『大正十四年 国勢調査報告 第一巻 記述編』小数点以下第二位(km2)なし系統1b(上の速報値を修正したものだが、全国の郡部・市部面積合計値のみ記載)
『昭和25年国勢調査報告 第7巻 都道府県編』 小数点以下第二位(km2)なし系統1b' (各都道府県別の郡部・市部合計値の記載のみ;『記述編』記載の全国合計との差は微細)
『日本人口密度図』小数点以下第二位(km2)小数点以下第二位(km2)系統2 (昭和5年からの遡及データ)


さらに今や近代デジタルライブラリーで種々の地方統計書の閲覧が可能ですが、これらの数字が異なる郡市別面積について、地方統計書で数字を補正しようと試みました。しかしながら残念なことに地方統計書は府県によって数字に統一がなく、場合によっては税金の対象となる土地総段別の面積のみしか情報がないところが多いようです。地方統計書に関しては、府県によっては参考になる場合があるものの、上の表から除外しました。

というわけで、大正9年、大正14年の国勢調査時の面積については、郡市別面積ですらまともに公式のデータ、すなわち陸軍参謀本部陸地測量部が公表したとされる面積すら揃えることができないという状況です。

【少数→小数に修正】【大正14年の国勢調査の『記述編』・『全国結果表』の説明が反転していたので大幅修正し、大正9年、大正14年の国勢調査時の面積について資料系統の説明を一部修正】
[87449] 2015年 4月 3日(金)18:47:54【1】YT さん
正規分布とのズレについて
[87448] オーナー グリグリさん
都道府県別の面積の丸め誤差をまとめて頂きありがとうございます。

以上の結果によると、全国の合計値の誤差(n=1921)が、0.25km2 となっていますが、[87439]における誤差(n=2000)の平均値 0.10km2 から大きく外れています。どこかに落とし穴があるのでしょうかねぇ。


|m| = a√{n/(6π)} = 0.1009... ≒ 0.10 km2 (n = 1921, a = 0.01)

は、蓄積された丸め誤差の平均(期待値)の絶対値です。蓄積された丸め誤差の標準偏差自体は

σ = a√(n/12) = 0.1265... ≒ 0.13 km2 (n = 1921, a = 0.01)

です。連続一様分布(アーウィン・ホール分布)に関しては、英語版のwikipediaに分かりやすい図と式がありました。を見ればわかるように、n ~ 8ぐらいで十分正規分布近似が可能となります。また説明にはvariance (分散, σ^2) = n/12 とありますが、この場合0から1までの連続一様分布を足した場合の分散であり、0~1とは限らない範囲0 ~ a(n回足せば、0 ~ naの範囲となる)であれば、分散σ^2 = a^2*n/12となり、標準偏差σは分散σ^2の平方根となるσ = a√(n/12)と表現されることになります。

全国の市区町村等別面積の合計と全国の面積との差である+0.25 km2は、一応±2σの範囲に収まり(正確には+0.245~+0.255の範囲を考慮すると、1.936σ~2.015σとなりますが)、受験でおなじみの偏差値であらわすのなら、偏差値69.8に相当する(正確には偏差値69.36~70.15の範囲)ので、多少丸め誤差の蓄積が予想よりも多めですが、一応許容範囲ではあると思われます。

[87439]のモデル表で言えば、丸め誤差が全く生じない確率(±0.005以下)は3%に過ぎない。
しかしながら生じる丸め誤差で一番確率が高いのは、±0.01 km2で、約6%の確率。
±0.10 km2の誤差が生じる確率は約5%程度だが、±0.10 km2以内に誤差が収まる確率は58%。±0.10 km2よりも誤差が大きくなる可能性は42%。
±0.25 km2の誤差が生じる確率はわずか1%だが、±0.25km2よりも誤差が大きく出る確率も、まだ5%あるという感じです。

都道府県別の[87448]のデータを使って、それぞれの実際の丸め誤差を、標本数から予測される標準偏差で割り、ズレを計算してみると:

ズレ都道府数割合(%)正規分布から期待される割合(%)
±3σ以上00.00.3
±2~3σ714.94.3
±1~2σ1123.427.2
±1σ以内2961.768.3

2σから3σまでずれる県が7県と、若干多いようです。ただし±3σ以上ずれている県はありません。具体的には以下の7県です。

都道府県誤差m, km2標本数n予測される標準偏差σ, km2ズレ
群馬県+0.05350.0171+2.93σ
富山県+0.03150.0112+2.68σ
佐賀県+0.03200.0129+2.32σ
新潟県-0.04370.0176-2.28σ
沖縄県+0.04420.0187+2.14σ
鹿児島県-0.04450.0194-2.07σ
埼玉県+0.05720.0245+2.04σ

こうやって並べてみると、確かに群馬県の誤差は大きいと言えます。また二番目の富山県などは、市町村数がたった15なのに、+0.03 km2も誤差が出ています。これらはありえないほど大きい誤差が出ていると言うほどではないが、やはり何かしら恣意的な原因もあるという可能性も否定できませんし、これだけのデータだけでは何とも言えません。あるいは四捨五入の際に、切り捨てというプロセスが混入してしまっている可能性もあるかもしれません。

群馬県・埼玉県については、[87423]でhmt さんが、m2単位のデータがあったことを指摘されていますが、もしかしたら具体的にどの辺が四捨五入の処理で問題になっているのか、あるいは単なる偶然なのか指摘できるかもしれません。

【±3σ以上の正規分布における割合を0.3%に修正、その他文章の一部を修正】
[87439] 2015年 3月 31日(火)23:39:06【4】YT さん
四捨五入に伴う面積の合計の丸め誤差についての統計学的考察
最近面積の改訂の話題が出ているので、久々に投稿します。

本来であれば面積は連続値であり、四捨五入に伴う丸め誤差が蓄積される結果、個々の自治体の面積の合計と国土の面積はズレて当たり前です。しかしながら2013年以前の国勢調査記載の面積の数字や陸軍参謀本部の調査による面積の数字においては、そのような丸め誤差が全くなく、市区町村別の面積の合計と、市郡別、都道府県別、国土の面積が完全に一致します (合衆国統治の琉球・沖縄の面積や1945年・1947年の面積などは、公式の数字で色々ズレがあるのですが、まあこれは除外して考えます)。平成26年の面積の改訂により、むしろ正しい面積の表記になったわけですが、チェックがし辛いという別の問題も出たわけですね。

面積の合計に伴う丸め誤差について、以前自分も[85659]で大雑把に見積もりましたが、

小数点以下第3位で四捨五入しているとすると、本当の面積のデータは±0.005 km2の範囲に存在し、四捨五入後の値との誤差の絶対値の平均は0.0025 km2となります。

ここの部分でズボラな結論で誤差を見積もったのですが、数学的な誤りがありました。そこで改めて四捨五入に伴う面積の合計の丸め誤差について見積もり直してみました。一応高校卒業レベルの微積・確率統計の知識で理解できる内容だと思います。

今、平均値m = 0で、±a/2の間に収まる連続一様分布を仮定します。∫f1(x)dx = 1になるように確率密度関数f1(x)を規格化すると、

|x| ≦ a/2: f1(x) = 1/a
|x| > a/2: f1(x) = 0 ...(1)

と表現できます。確率密度関数f1(x)の分散(σ1)^2は、[85659]で示したように(a/4)^2では誤りであり、ちゃんと積分により計算すると、

(σ1)^2 = ∫(x - m)^2*f1(x)dx (但し -∞ < x < +∞)
= 1/a ∫x^2dx (式(1)を代入, 但し -a/2 ≦ x ≦ a/2)
= a^2/12 ...(2)

さて、f1(x)同士を2つ足し合わせた時の確率密度関数f2(x)は、

|x| ≦ a: f2(x) = (a - |x|)/a^2
|x| > a: f2(x) = 0 ...(3)

分散(σ2)^2は
(σ2)^2 = ∫(x - m)^2*f2(x)dx (但し -∞ <x < +∞)
= 2/a^2 ∫ -x^3 + ax^2 dx (式(3)を代入, 但し 0 ≦ x ≦ a)
= a^2/6 (= 2*(σ1)^2) ...(4)

さらに3個、4個、…n個と、この確率密度関数を足し合わせていくと、確率密度関数fn(x)は、パスカルの三角形の組み合わせで継ぎ合わさったような、カクカクの複雑な多次多項式となります(アーウィン=ホール Irwin-Hall 分布)。ただしnが十分大きければ、確率密度関数は正規分布に近似できます。ここで分散(σn)^2は、個々の分散(σ1)^2の和なので、

(σn)^2 = n*a^2/12 ...(5)

となるはずです。実際n = 2の時も成立することを、式(4)で確認しました。

2013年以前の市町村別面積も小数第三位で四捨五入されており、±0.005 km2の誤差を含むはずです。よってn = 約2000の市区町村等の面積の合計であれば、a = 0.01 km2なので、(5)式に代入することにより、真の面積との間の丸め誤差の標準偏差は

σn = √(2000 × 0.01^2/12) ≒ 0.12909944 (km2)

になり、また丸め誤差の誤差分布も、σ ≒ 0.129 km2の正規分布に近似できることになるはずです。2000の自治体を合計した結果、小数点以下第2位まで一致する確率、すなわち± 0.005 km2の間に面積が入る確率は、標準正規分布のZ ≒ ±0.038729833 (≒ 0.005/0.12909944)の間に入る確率です。この範囲に入る割合は、エクセルのNORM関数を使って計算すると約3.0894%と求められます。つまり、2010年頃の約2000の市町村別等の面積の合計が、日本全国の面積の合計に一致する確率はわずか3%程度で、本当に面積が純粋な四捨五入だけで求めているのであれば「ありえない」確率ということになります。

また実数からどの程度ずれが生じてしまうかですが、平均が0、標準偏差がσとなるような正規分布の確率密度関数f(x)は、次のように表現できます。

f(x) = 1/√(2πσ^2) * exp {-x^2/(2σ^2)}...(6)

よってズレの平均値mは 0 ≦ x < +∞ の範囲のみを考えると、

m+ = ∫xf(x)dx (但し 0 ≦ x < +∞)
= 1/√(2πσ^2) ∫ x exp {-x^2/(2σ^2)} dx (式(6)を代入) ...(7)

ここでt = x^2/(2σ^2), x dx = σ^2 dt ...(8)と置いて(7)式に代入すると

m+ = σ/√(2π) ∫exp(-t) dt
= σ/√(2π)[exp{-x^2/(2σ^2)}] (但し 0 ≦ x < +∞)
= σ/√(2π) ... (9)

同じように負側の平均を積分で求めると、m- = -σ/√(2π) となり、合計m = m+ + m- = 0で平均はゼロになってしまいます。元々平均がゼロになる確率密度関数を選んでますので当たり前のことです。しかしながら、我々にとって正にズレようが負にズレようが、ズレていることには変わりなく、重要なのはズレxの絶対値の平均|m| = |m+| + |m-|です。よって

|m| = |m+| + |m-| = σ√(2/π) ...(10)

ここでσ = σn とすると、式(5)より

|m| = a √{n/(6π)} ...(11)

n = 2000, a = 0.01とすると、

|m| ≒ 0.10300645

というわけで、2000の自治体の面積の合計した際に生じる丸め誤差の平均を見積もっても、せいぜい±0.10 km2程度という結論がでます。

エクセルのNORM関数を使って、もう少し詳しくモデル計算(n = 2000)をしますと以下の通りです。

面積のズレ(km2)実数との差(km2)割合(%)割合の累積(%)標準偏差の累積σ(面積のズレの絶対値)×(割合)の累積(km2)
±0.00±0.000~0.0053.0893.0890.03870.00000
±0.01±0.005~0.0156.1609.2500.11620.00062
±0.02±0.015~0.0256.10515.3550.19360.00184
±0.03±0.025~0.0356.01421.3690.27110.00364
±0.04±0.035~0.0455.88927.2590.34860.00600
±0.05±0.045~0.0555.73332.9910.42600.00886
±0.06±0.055~0.0655.54738.5380.50350.01219
±0.07±0.065~0.0755.33543.8720.58090.01593
±0.08±0.075~0.0855.10048.9720.65840.02001
±0.09±0.085~0.0954.84653.8190.73590.02437
±0.10±0.095~0.1054.57858.3970.81330.02895
±0.11±0.105~0.1154.29962.6960.89080.03367
±0.12±0.115~0.1254.01266.7080.96820.03849
±0.13±0.125~0.1353.72270.4301.04570.04333
±0.14±0.135~0.1453.43373.8631.12320.04813
±0.15±0.145~0.1553.14777.0101.20060.05285
±0.16±0.155~0.1652.86879.8781.27810.05744
±0.17±0.165~0.1752.59882.4761.35550.06186
±0.18±0.175~0.1852.33984.8141.43300.06607
±0.19±0.185~0.1952.09386.9071.51050.07005
±0.20±0.195~0.2051.86288.7701.58790.07377
±0.21±0.205~0.2151.64790.4161.66540.07723
±0.22±0.215~0.2251.44891.8641.74280.08041
±0.23±0.225~0.2351.26593.1291.82030.08332
±0.24±0.235~0.2451.09994.2271.89780.08596
±0.25±0.245~0.2550.94895.1761.97520.08833
±0.26±0.255~0.2650.81495.9902.05270.09045
±0.27±0.265~0.2750.69496.6842.13010.09232
±0.28±0.275~0.2850.58997.2732.20760.09397
±0.29±0.285~0.2950.49697.7692.28510.09541
±0.30±0.295~0.3050.41698.1852.36250.09666
±0.31±0.305~0.3150.34698.5312.44000.09773
±0.32±0.315~0.3250.28798.8182.51740.09865
±0.33±0.325~0.3350.23699.0542.59490.09943
±0.34±0.335~0.3450.19399.2472.67240.10008
±0.35±0.345~0.3550.15799.4042.74980.10063
±0.36±0.355~0.3650.12799.5312.82730.10109
±0.37±0.365~0.3750.10299.6322.90470.10146
±0.38±0.375~0.3850.08199.7142.98220.10177
±0.39±0.385~0.3950.06599.7783.05970.10203
±0.40±0.395~0.4050.05199.8293.13710.10223
±0.41±0.405~0.4150.04099.8693.21460.10239
±0.42±0.415~0.4250.03199.9013.29200.10252
±0.43±0.425~0.4350.02499.9253.36950.10263
±0.44±0.435~0.4450.01999.9433.44700.10271
±0.45±0.445~0.4550.01499.9583.52440.10277
±0.46±0.455~0.4650.01199.9683.60190.10282
±0.47±0.465~0.4750.00899.9773.67930.10286
±0.48±0.475~0.4850.00699.9833.75680.10289
±0.49±0.485~0.4950.00599.9873.83430.10291
±0.50±0.495~0.5050.00399.9913.91170.10293

ズレが±0.00の割合と±0.01の割合では後者の方が倍近くになりますが、これは四捨五入して±0.01になる範囲が四捨五入して±0.00になる範囲の倍存在するからで、ここから値が大きくなるほど割合自体は減ります。50%の確率でズレは約±0.6745σ ≒ ±0.087 km2の間に入り、標準偏差 ±1σ ≒ ±0.129 km2の範囲に収まる確率は約68.27%となりますが、ズレの値にそれぞれの予想される割合を乗じて合計することで求まる、ズレの絶対値の平均はσ√(2/π) ≒ 0.7979σ ≒ 0.103 km2に収束します。

このようにちゃんと計算すると、モデル(小数点以下第三位で四捨五入し、2000個合計した場合)における丸め誤差の標準偏差σ = a√(n/12)≒ 0.13 km2 と、絶対値のみを考慮した場合の丸め誤差の平均値|m| = σ√(2/π) ≒ 0.10 km2 は一致しません。まあ[85659]で見積もった

2000前後の自治体でこの誤差を合算すると、二項分布を考えれば全国の面積合計で√2000 × 0.0025 ≒ 0.11 km2程度の丸め誤差は出て当たり前のはずですが、

の数字ともそんなに違わない値となりましたが、より正しい議論をすると以上のようになります。

以上をまとめると、小数点以下第三位で四捨五入した面積を約2000ほど足した場合、真の値との間に0.01 km2の誤差すら生じない確率はほとんどありえない(約3%程度)が、実際のズレは平均すると±0.10 km2程度ということになります。市区町村とその他未確定地域が合計約1万2000あった昭和10年の国勢調査であれば、丸め誤差の絶対値は平均0.25 km2にまで拡大します。1950年から2010年までの国勢調査報告書に記載の面積においては、総ての市区町村と未確定地域の面積の合計が全国・都道府県・郡市別面積と小数点以下第二位まで完全に一致しており、いささかの丸め誤差も存在しません。つまり2013年以前の面積調では、合計が一致するように端数を適当に処理し、実数とは異なる面積を公表していたことになります。
【追加修正:表に色々数字を追記し、説明文を修正】
[86844] 2014年 12月 28日(日)23:22:42YT さん
メンバー紹介について
[86808] オーナーグリグルさん
[86815] かぱぷうさん

最近生活環境が大いに変わり、落書き帳に余り書き込めておりませんYTです。というか、プライベートの方で非常に目出度いことがあったのですが、その結果として深夜にネットを閲覧したり書き込んだりするようなことができなくなったのです。

というわけで、[86806]のじゃごたろさんの書き込みと同様、私のメンバー紹介のところの、
書き込みの時間は深夜帯が多く、
文章作成中に睡魔が襲ってこないかを心配する向きもあるが、
睡眠の誘惑に打ち勝っている模様。

という部分が事実とは異なる状況になりつつあるので(まあ、数字や長文、歴史系の話題が多い傾向は続くでしょうが)、できれば深夜の書き込み云々の部分は適当にカットして頂くようお願いします。再び深夜に書き込むようになっていたら、それはプライベートが元に戻った時でしょう…

というわけで、オーナーグリグリ様、今後は書き込み頻度や情報の更新速度が相当遅くなるかと思いますが、今後ともよろしくお願いします。
[86490] 2014年 10月 26日(日)01:08:25【1】YT さん
アボガドロ数について
[86482] hmt さん

「N=6022垓1417京9千兆個の粒子を1モルとして纏めて扱う」


ちょっと地理の話題から脱線しますが、この手の基礎物理定数はCODATA (Committee on Data for Science and Technology; 科学技術データ委員会)が定期的(4年毎)に改訂するものです。hmt さんが書かれたアボガドロ数
NA = 6.02214179(30) × 10^23 mol^-1
は、2006年のCODATAの推奨値で、最新の2010年のCODATA推奨値によるアボガドロ数は、
NA = 6.02214129(27) × 10^23 mol^-1 (定数に対する標準誤差は4.4 × 10^-8)
となっております。

また2010 CODATAには間に合いませんでしたが、ケイ素の単結晶の解析(Andreas, B. et al. Phys. Rev. Lett. 2011, 106, 30801; Metrologia 2011, 48, S1)により、
NA = 6.02214082(18) × 10^23 mol^-1 (定数に対する標準誤差は3.0 × 10^-8; なおPRLの論文では NA = 6.02214078(18) × 10^23 mol^-1となっていた)
という実験結果が得られております。2014年のCODATAの第24回会議は来月11月上旬にニューデリーで開催される予定であり、その際にアボガドロ数の改訂が行われることになると思います。なおCODATAの会議は、1996年に日本の筑波で開催されたこともあるようです。

ところで上のアボガドロ数は、ケイ素の単結晶の解析実験により得ら得れた数字ですが、これはSI基本単位である「キログラム」や「モル」の再定義と直結する、極めて重要な問題を含んでおり、1ヶ月後には「定義値」になるかも知れません。

SI単位系といえば、長さがメートル(m)、質量がキログラム(kg)、時間が秒(s)、電流が(A)、温度が(K)、物質量がモル(mol)、光度がカンデラ(cd)ですが、この中で一番正確な定義がなされているのが、セシウム原子時計によって定義されている「秒」です。ただ原子時計に用いられるセシウム核種に混ざる不純物により、2.5 × 10^-11程度の相対的な誤差が出る可能性があり、将来的には定義に用いられる原子時計の核種が変わる可能性があります。

SI単位系ではおそらく一番馴染みが深いのが「メートル」でしょうが、現在はメートル原器ではなく、真空中の光速度による定義に変わっています。「真空中で「1秒」の299792458分の1の時間に光が進む行程の長さ」と定義文にあるように、長さの基本単位「メートル」は時間の基本単位である「秒」により定義されており、相対誤差(10^-10)も、時間の誤差よりも大きくなります。

「アンペア」と「カンデラ」の定義には「メートル」、「キログラム」(キログラムの定義については後述)、「秒」が、「モル」の定義にはアボガドロ数を介して「キログラム」が関わってきますので、これらの単位系の相対誤差は「メートル」、「キログラム」、「秒」よりも悪いものとなります。

温度の「ケルビン」は、「水の三重点の熱力学温度の 273.16分の1」という定義がなされていますが、そもそも温度というのは視覚的な測定が難しいため、建前上の定義と実用の間に大きな差があります。一応温度に関しては、測定温度範囲毎に膨張率の異なる金属を組み合わせるなどして測定するような、実用のための補正方法が別に決められていますが、室温付近でも10^-5程度の相対誤差は当たり前のように出ます。

さて、質量の単位である「キログラム」ですが、未だに「国際キログラム原器の質量」という、200年以上前の定義が使われています。各国に配られたキログラム原器を、0.1 μg単位(原器に対する誤差は10^-10)まで正確に計ることができる特殊な天秤で量ることで質量を校正するわけですが、キログラム原器とその複製品を比べると、200年間で±2σ ~ ±50μg程度 (相対誤差は10^-8のオーダー)のばらつきが出ていることが判っています。それにも関わらずキログラム原器が使われて来た理由は、これでも実用に問題無かったからですが、10年程前よりキログラム原器に替わる新しい定義として、(1) ワット天秤を用いたプランク定数による定義 と、(2) ケイ素単結晶を用いたアボガドロ数による定義 などが議論されるようになりました。現在プランク定数もアボガドロ数も、4.4 × 10^-8程度まで相対誤差が小さくなっており、これはキログラム原器に由来する質量の誤差が原因と考えられています。どちらをキログラムの定義に使うにせよ、プランク定数やアボガドロ数を定義値にすることにより、将来的に質量の潜在的な測定誤差が減ることが期待されるわけです。現状ではプランク定数による定義の方が優勢で、アボガドロ数はキログラムの定義には用いられない見通しになって来ましたが、モルの定義にはアボガドロ数が使われることになります。また電子素量により電流のアンペアの定義を、ボルツマン定数により温度のケルビンの定義を変えることも考えられており、来月11月の中旬にフランスのヴェルサイユ宮殿で開催される第25回国際度量衡総会により、「キログラム」、「モル」、「アンペア」、「ケルビン」の定義が変わるかも知れません。

なお国際度量衡総会の方は、フランスの外務大臣が議長を、フランスの科学アカデミー会長が司会進行を務め、必ずSI原器も保存されているセーヴル近辺で開催されることになっているようです。


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