[97561] 白桃さん
全日本DIDランキング(フライ級)を拝見しました。市制施行に至らない大河原が、あの格式高い新宮や、高い知名度を持つ留萌、根室といった都市と肩を並べている。一見、嘘のようだが嘘じゃない。DID人口だけでは真の都市の大きさが見えてこないので、「小売業集積地区小売販売額」のランキングを作って都市の大きさを比較することにします。対象となるのは、白桃さんがフライ級に掲示した大竹から札内までの11都市に中標津、船岡を加えた13都市です。
まず、都市地域の定義ですが、年間小売販売額1億円以上の3次メッシュ同士が互いに連接し(角が接していれば連接とみなす)、その連担メッシュの合計年間小売販売額が200億円を超える地域を指して都市地域とします。この条件に従うと、大竹は岩国と、大井松田は小田原と、札内は帯広と連結しているので独立した都市地域とは認められず、嘉手納(読谷を含む)は年間小売販売額が200億円未満なので、都市地域の条件を満たしていません。その結果、人口集中地区を形成し、商業機能が集積し、独立性を保ちながら地域の中心都市となっているであろう9都市(北海道の留萌、名寄、紋別、中標津、根室、宮城県の大河原、船岡、新潟県の加茂、和歌山県の新宮)が生き残りました。
上記の9都市に関してA、B、2つのデータを準備しました。
Aは「昭和45年国勢調査報告 別巻わが国の人口集中地区」と「昭和47年事業所統計調査報告 別巻人口集中地区国勢統計区編」を基礎資料にして、人口集中地区内に所在する事業所の中から金融保険業と卸売小売業を抽出し、その従業者数を人口に換算した数値です。 今から50年ほど前のデータですが、結構いい線で当時の都市の大きさを表わしていると思います。
Bは「平成26年商業統計メッシュデータ」を基礎資料にして、年間小売販売額1億円以上の3次メッシュ同士が互いに連接し(角が接していれば連接とみなす)、その連担メッシュの合計年間小売販売額を人口に換算した数値です。ですから、例えば大河原船岡71,442人とあるのは、そこに71,442人が住んでいるのではなく、71,442人分の都市の働きをしているということです。
順位 | 都市名 | A・昭和40年代 | | 順位 | 都市名 | B・平成26年 |
1位 | 新宮 | 50,504人 | | 1位 | 大河原船岡 | 71,442人 |
2位 | 留萌 | 38,032人 | | | (大河原) | 35,920人 |
3位 | 根室 | 32,800人 | | | (船岡) | 35,522人 |
4位 | 名寄 | 32,664人 | | 2位 | 中標津 | 55,999人 |
5位 | 紋別 | 25,270人 | | 3位 | 新宮 | 34,673人 |
6位 | 加茂 | 24,688人 | | 4位 | 根室 | 31,309人 |
7位 | 大河原 | 13,424人 | | 5位 | 名寄 | 27,842人 |
8位 | 中標津 | 13,376人 | | 6位 | 留萌 | 25,577人 |
9位 | 船岡 | 7,592人 | | 7位 | 紋別 | 25,198人 |
| | | | 8位 | 加茂 | 20,339人 |
「A・昭和40年代」のランキングは、中高齢者の方々の頭の中に染み付いている「都市の大きさ」の序列そのものではないでしょうか。当時の新宮は大きな都市で、市制施行に至らない大河原、中標津、船岡(柴田町)から見れば、全く異なる階層の都市だったはずです。それが「B・平成26年」のランキングでは、大河原、中標津、船岡(柴田町)の下位になり、都市の盛衰の激しさが感じられます。「B・平成26年」の1位は大河原船岡で、3次メッシュでは大河原町と柴田町の商業ゾーンが連接していますから、1つの都市として扱います。でも、これを分離してみると大河原町の分が35,920人、柴田町(船岡)の分が35,522人となり、全く互角の2町が連担都市地域を形成しているのが見えてきます。大河原船岡と中標津の共通点は、行政上は町なのに、近隣の市を凌ぐ活況を呈して市町逆転現象を引き起こしていることです。昭和30年代の頃、根室に強力なライバル出現と騒がれた中標津は、今では根室を凌ぐ商業都市に発展し、大河原船岡は白石市、角田市から買い物客を集める商業都市に成長しています。それにしても、新宮、留萌、根室の衰退はどうしたことでしょう。特に新宮の凋落ぶりは数字を見ていて辛いものがあります。